――――――――――――――ある観察記録 私の名前はベレイラ・スミスと申します。 当年とって二十歳になるハンターの卵です。 銃器の扱いがちょっと得意です。名前が似ている事と使い勝手の良さからベレッタをよく使います。そのお陰で仲間内からはベレッタと呼ばれる事が多いです。 実は先だって、無事ハンター資格を取得する事に成功しました。 とは言ってもハンターになれるという資格を得ただけで、実際に一人立ちするのはまだ先の話です。 今は先輩ハンターにつき従って行動するバディ研修期間中です。 私の研修を引き受けてくださったのは何と、彼のロックフォードの再来とまで言わせしむる有名人でした。 コードネームは、Clown・Crow―――本名はハバキクロウさんと仰るらしいです。 緊張しました。何せ相手はここ数年のハンターランキングの一位を独走している雲の上の方です。どれだけ怖い方だろうと思っておりましたが、お会いして話して見ると意外なほど気さくで、とても朗らかな印象でした。 穏やかで優しいのに、時々驚くほど豪快で大胆でちょっと………(言葉を選んでいる)…独特の感性をお持ちですが、芯の通った強さを持つとても素敵な方です。 こんな先輩について頂けるなんて、私は幸せ者なのです。 その日は一つの大きな任務を終えて、暫く疎遠だった本部に先輩と顔を出す事になりました。半年振りくらいの本部です。入ったロビーはとても懐かしく感じました。 「………何だ、お前だけか…?」 その懐かしさを満喫しているととても気だるげな声が掛けられました。声の許を辿るとそこには革張りのソファで足を寛げ、煙草をふかしている青年の姿。 「ミスタ・ミナカミ…」 「あいつはどうした。一緒に帰ってきてるんじゃないのか?」 そう言ってほんの僅かに眉を顰める彼はミナカミコウタロウ氏。 この人もある意味有名人だったりします。それと言うのも、ハンター資格を持っているに関わらずハンター登録をせずに何故か研究チームに所属しているという摩訶不思議な人物だからです。 その上ハバキ先輩と非常に仲がよいと言うのだから、有名にもなるというものです。 「先輩は…入り口で別のハンターさんに捕まって…話し込んでおられますよ」 私がそう答えると「ふぅん」とさもどうでも良さそうな生返事。 この人の顔には覇気と言うものが存在しません。何時も眠そうにしているか、不機嫌そうにしているか、どちらかなのです。 ですが私は知っています。 無表情だクールだと影で囁かれる彼の顔が笑み崩れる瞬間を。 それは―――、 「じゃあなクロウ!さっきの話、考えておいてくれよ!」 「冗談じゃねえ、他当たれよ。あんたみたいな老い耄れに背中なんて預けられるかってんだ―――と、お」 「よぉ…おかえり九龍」 そうそれはこの瞬間。 自動ドアを開けてロビーに入ってきた先輩を迎える彼の顔。 とろけるような笑顔。 何て幸せそうなのでしょう。 そしてそれは、 「ただいま、甲太郎」 先輩も同じ。 何時も浮かべるシニカルな笑みとは違う、その顔はまるで子供のよう。 ただのご友人という関係には思えなくて、私は一度「恋人なのか」と聞いた事があります。しかしそれはきっぱりと否定されてしまいました。このお二人の間には、きっと私には理解し得ない何かがあるのだろうと確信しております。 煙草を揉み消しながらソファから立ち上がる彼に足取り軽く歩み寄る先輩。 そして―――――。 響き渡る銃声。 ………。 …………。 ……………銃声。 ……………銃声? 沈黙。 ロビーの自動ドア(防弾仕様)に減り込んだ鉛弾から微かな煙。 「………こ、の至近距離からよくも…」 咄嗟に伏せた床から身を起こす先輩。 ……はい。 彼、躊躇いも無くトリガーを引きましたね、今。 というか先輩も、そこは人として当たっておく所だと思います。 「お前いい加減、長期任務に就く度に俺が苦労して掻き集めたスパイスをごっそり盗んでいくのは止めろ」 「盗んでない!借りたと言ってくれ!」 「返した試しなんぞねえだろうが!」 「だ、だって甲ちゃんが選んだ方が味も品質も保障つきだからさぁ?」 「俺の目を見てモノを言え」 「…ゴメンナサイ」 「イイコだ。二度としないな?」 「…………」 「しないな?」 「………シマセン」 「よし、いいだろう。じゃあ俺は仕事に戻る。そろそろ培養液の中身が心配だ」 「……お前コレ言う為だけに出迎えに来たのか…」 「そうだが?」 「………愛がねぇ…」 「…欲しいのか」 「……………………結構です」 …このお二人の間には、きっと私には理解し得ない何かがあるのだろうと確信しております。 ………ホントに。 |
またオリキャラ。
第三者、しかも二人にあまり詳しくない人の目線で書いて見たかっただけ。
皆守専属バディから方向転換。
05.08.16